【表紙】障害者差別解消法事業者のための合理的配慮ハンドブック 横浜市障害者社会参加推進センター 【表紙裏面】 障害者差別解消法は、障害のある人への差別をなくし、障害のある人もない人も、互いを尊重し合いながら「共に生きる社会」(共生社会)を実現していくことを目指してつくられました。 令和 3 年には障害者差別解消法が改正され、事業者による「合理的配慮の提供」は努力義務でしたが、令和6年4月1日から義務化されることになりました。 障害のある人への配慮を適切に行うためには、どのようなことに障害のある人が困っているのか、どうすれば困りごとが解消できるのかということについて、障害のある人とのコミュニケーションを通じて共に考えていくことが大切です。 この冊子が、事業者の皆様にとって、障害や障害者についての理解を深め、合理的配慮が社会に浸透していくための一助となれば幸いです。 なお、この事例集では、差別に関する障害者雇用促進法などの事例もとりあげています。 【1頁目 目次】 1障害者差別解消法はどのような法律ですか?_2頁目 2障害のある人への対応の基本_5頁目 3障害と障害特性_6頁目 ・肢体不自由_7頁目・視覚障害_8頁目・聴覚障害_9頁目・内部障害_10頁目・知的障害_11頁目・発達障害_12頁目・精神障害_13頁目 4合理的配慮の事例 _14頁目 【1】窓口での対応_14頁目 【2】商店での対応_16頁目 【3】飲食店での対応_18頁目 【4】公共交通機関での対応_20頁目 【5】医療機関での対応_22頁目 【6】施設の利用_24頁目 【7】障害者の就労_26頁目 5取組みを進めるために_28頁目 【2頁目 障害者差別解消法はどのような法律ですか?】 障害者差別解消法は、企業や店舗などの事業者や行政機関等に対して、① 障害を理由とする「不当な差別的取扱いの禁止」② 社会的な障壁を取り除いていくための「合理的配慮の提供」を求め ています。 この法律で「事業者」とは、商業等の事業を行う企業や団体で、営利・非営利であるか、法人・個人であるかに関わらず同じサービスをくり返し継続する意思をもって行う者のことです。 個人事業主やボランティア活動をするグループ等も「事業者」に入ります。 1 不当な差別的取扱いの禁止とは? 障害のある人に対して、正当な理由がないのに、障害があるというだけで各種のサービスの提供を拒否することや、サービスの提供にあたって場所や時間帯を制限すること、障害のない人には付けない条件を付けることなどは禁止されています。 不当な差別的取扱の例●受付での対応を拒否する●学校の受験や入学を拒否する●アパートを貸さない等 正当な理由「正当な理由」の判断は、個別の事案ごとに、具体的場面や状況に応じて行うことが必要です。当事者以外の人から見ても納得を得られるような客観性が求められます。「もし何かあったら…」といった理由で、一律にサービスの提供を断るようなことは事業者の適切な対応とは言えません 【3頁目 2頁目からの続き】 2 合理的配慮の提供とは? 障害のある人から手助けを必要としているとの意思が伝えられた場合には、負担が過重でない範囲で対応することが求められます。合理的配慮を提供しないことも、障害者に対する差別になります。過重な負担かどうかの判断は、事務事業への影響、実現可能性、費用負担の程度などを考慮して判断されますが、お金や人手に制約があるなかでも、障害のある人との話し合いを通じて合意形成に努め、互いに納得できる現実的な対応を柔軟に考えましょう。 合理的配慮の例●段差がある場合に、スロープを使って補助する●絵や写真を使って、分かりやすく伝える●目が見えない人に、書類を読んで説明する等 【 合理的配慮の考え方 】 合理的配慮とは、具体的な場面での困りごとを取り除くために、障害のある人への対応に個別の変更や調整を行うことです。合理的配慮の方法は一つではなく、障害の特性や具体的な状況に応じて、個別的で多様性があることに留意しましょう。 環境の整備 合理的配慮を必要とする障害者が数多く見込まれる場合や継続的に対応が必要な場合には、環境の整備として、施設のバリアフリーやウェブアクセシビリティ(人に優しいデジタル化)なども検討しましょう。 【4頁目 3頁からの続き】 3 社会的障壁と障害の社会モデル 障害のある人が社会生活の中で感じている生きづらさは、その人の障害だけが原因ではなく、社会のあり方とも深く関わっています。障害のある人が生活をしていくうえで様々な制約をもたらす原因となる、社会の中にあるバリアを社会的障壁といいます。障害のない人が多数を占めている社会では、こうした社会的障壁は気づきにくいものとなっています。 様々なバリア ・物理的なバリア 移動を妨げる道路や建物の段差等 ・情報等のバリア 字幕のない放送や音声のない交差点信号等 ・制度的なバリア  障害を理由とする資格・試験の欠格事由、入居・入所の制限等 ・意識上のバリア:障害者に対する無理解や誤解に基づく差別や偏見 障害の社会モデル 「障害」は、個人の心身の機能障害と社会の障壁の相互作用によってつくり出されている、という考え方を「障害の社会モデル」といい、障害者差別解消法にも取り入れられている考え方です。 障害のある人の活動を制限している様々な社会的バリアを取り除いていくこと(合理的配慮の提供)は、社会の責務でもあります。 【5頁目 障害のある人への対応の基本】 障害のある人の思いに寄り添って ●声かけ ・本人に声をかけ、サポートが必要か確認しましょう。 ・介助者がいる場合でも本人に向かって話しかけましょう。 ●コミュニケーション ・どのようなことに困っているのか話を聞きましょう。 ・困りごとを解消するためにどうすればよいか話し合いましょう。 ●柔軟な対応 ・意向を尊重し、その人にあったサポートを考えましょう。 ・対応が困難な場合には、その理由を分かりやすく説明しましょう。 ちょっと待って!!そのひとこと 「前例がありません」・合理的配慮の提供は、個別の状況に応じて柔軟に検討する必要があります。前例がないことは、断る理由になりません。 「特別扱いできません」・合理的配慮は障害のある人もない人も同じようにできる状況を整えることが目的であり、特別扱いではありません。 「もし何かあったら…」・漠然とした危険性だけでは断る理由にはなりません。リスクの可能性や対応方法について、具体的に検討する必要があります。 「〇〇障害のある人は…」・同じ障害でも程度などによって適切な配慮が異なりますので、ひとくくりにせず個別に検討する必要があります。 【6頁目 障害と障害特性】 障害者差別解消法に書いてある「障害者」とは、障害者手帳を持っている人のことだけではありません。身体・知的・精神に障害のある人、その他の心や体の働きに障害のある人で、その障害や社会的な障壁によって日常生活や社会生活に相当な制限を受けている人すべてを対象としています。(障害児も含まれます。) 障害特性 障害は、その種別や程度によって一人ひとりに違いがあります。外見からは分かりづらい障害や、複数の障害(重複障害)がある人もいます。 こうした障害の多様性を踏まえたうえで、障害の特性について理解することは、求められる配慮や対応を行うための手助けとなります。 困りごとへの気づき この冊子に記載している障害以外にも、心身の障害によって様々な生活上の困難を抱えた方々がいます。また、心身に障害がなくても、高齢者、妊産婦など、配慮を必要としている人もいます。このような方々の生きづらさに思いをよせ、その人が必要としている支援を行っていただくようお願いします。 ※ヘルプマーク掲載 援助や配慮を必要としている人を示すマークです。このマークを見かけたら、席をゆずる、声をかける等、思いやりのある行動をお願いします。 【7頁目 肢体不自由】 上肢・下肢・体幹の機能に障害があるため、起立、歩行、物の持ち運びや姿勢の維持などが不自由になります。身体にマヒがあり自分の意思とは関係なく身体が動く不随意運動や言語障害を伴う方もいます。 SOSこんなことに困っています ・一人での移動、食事、入浴などの日常生活上の動作が大変です。 ・段差や階段、急な坂道等の移動が大変です。 ・脊髄を損傷した方は、体温調節が困難な場合があります。 ・マヒや不随意運動を伴う方は、言葉を話すことや文字を記入することが困難な場合もあります。 対応のポイント ・コミュニケーションをとるときは目線の高さを合わせましょう。 ・同行者や介助者がいる場合でも本人に声をかけましょう。 ・会話が聞き取りにくい時は分かったふりをせず、話の内容を一区切りずつ確認しながら話をしましょう。聞き返しても大丈夫です。 ・言葉をうまく話せない方に対して、子どもに話しかけるような口調で話しかけないようにしましょう。 ※障害者のための国際シンボルマーク(車いすマーク)掲載 障害のある人が利用しやすい建築物や施設であることを示す世界共通のマークです。 【8頁目 視覚障害者】 目からの情報が得にくいため、物の形や大きさ、方向や距離、配置などを把握することが困難になります。このため、音声や手で触ることなどによって情報を入手します。視覚障害といっても、全く見えない人(全盲)だけでなく、見えにくい人(ロービジョン)や聴覚の障害をあわせ持つ人(盲ろう)もいます。 SOSこんなことに困っています ・慣れていない場所を一人で移動することが困難です。 ・文章を読んだり、文字を書いたりすることに困難が伴います。 ・白杖では検知できない障害物等の危険に気づかないことがあります。 対応のポイント ・正面または側面から声をかけ、支援が必要か確認しましょう。 ・情報を言葉や音で伝えます。(文書を読んで伝えるなど)「あちら」、「これ」などの指示語は使わず、「2 歩前」や「1 時の方向」のように具体的に説明しましょう。 ・階段や段差の前では、いったん止まって、「上りの階段です」のように変化する状況を伝えてください。 ※白杖SOSシグナルマーク掲載 視覚障害者が白杖を頭上五十センチメートル程度掲げてシグナルを出していたら、進んで声をかけて、困りごとを聞いてサポートをお願いします。 【9頁目 聴覚障害者】 聴覚に障害のある人は、話し言葉を聞き取ったり、周囲の音から状況を判断することが困難になります。このため、手話や文字・絵などの視覚的な情報が大切になります。声を出して話せても相手の声が聞こえない人や、手話を使わない聴覚障害者もいます。 SOSこんなことに困っています ・聴覚に障害のある人は、話し言葉を聞き取ったり、周囲の音から状況を判断することが困難になります。このため、手話や文字・絵などの視覚的な情報が大切になります。声を出して話せても相手の声が聞こえない人や、手話を使わない聴覚障害者もいます。 対応のポイント ・相手の視野に入るようにして、やさしく気づかせてください。 ・音声の情報を、目で見てわかる情報に変えて伝えましょう。(手話や筆談、身振り、イラストなど様々な方法があります。) ・筆談をするときは、簡潔で分かりやすい表現を用い、大切なところは線を引くなど書き方を工夫しましょう。 ・電話での対応が困難なため、FAX やメールで連絡してください。 ・マスクを外して口の動きが分かるようにしましょう ※耳マーク掲載 聞こえが不自由なことを表すと同時に、聞こえない人・聞こえにくい人への配慮を表すマークです。 【10頁目 内部障害】 内臓機能の異常や喪失のため、継続的な医療的ケアが必要であったり、体力がなく疲れやすいなど様々な生活のしづらさを抱えています。 内臓の機能障害に応じて、ペースメーカーや人工呼吸器を使用している人、オストメイト(人工肛門や人工膀胱を保有している人)、定期的に人工透析を受けている人などがいます。 SOSこんなことに困っています ・重たい荷物を持つことや長時間の移動などの身体的負担を伴う行動が制限される場合があります。 ・外見からは障害があることに気づかれないことも多く、周囲から理解してもらいにくい場合があります。 ・オストメイトの場合、通常のトイレでは不便を感じることがあります。 対応のポイント ・ヘルプマーク等に気づいたら、席を譲るなどの配慮をしましょう。 ・申し出に応じて、本人の体調に負担をかけないよう対応しましょう。 ・医療機器を使用している場合は、本人に配慮事項を確認しましょう。 ※オストメイトマーク掲載 オストメイト(人工肛門・人工膀胱を造設した人)を表す、またはオストメイト対応の設備がある場所を示すマークです。 ※ハート・プラスマーク掲載 身体内部に障害のある人を表しています。外見からは分かりにくいため、様々な誤解を受けることがあります。内部障害への理解と配慮をお願いします。 【11頁目 知的障害】 先天的または発達期に知的機能の障害が現れ、知的発達の遅れや社会生活への適応のしにくさがあります。ひとつの行動に執着したり、同じ質問を繰り返したりすることがあります。 SOSこんなことに困っています ・漢字の読み書きや計算が苦手です。 ・人に何かをたずねたり、自分の考えを伝えたりすることが苦手です。 ・一度にたくさんのことを聞くと、混乱してしまうことがあります。 ・自分に不利益なことに同意してしまうことがあります。 ・いつもと違う環境や急な予定の変更などに合わせた行動をとることが苦手です。 対応のポイント ・穏やかな口調で声をかけてください。 ・ゆっくり、分かりやすい言葉で一つずつ伝えてください。 ・写真や絵カード、イラストなどを利用して、具体的に分かりやすく説明してください。 ・理解ができたかどうかの確認が必要です。 ※コミュニケーションボードの掲載(2種お店編と災害編)知的障害や自閉症など、文字や話し言葉によるコミュニケーションが難しい人には、イラストを指さすことで自分の意思を伝えることができるツールとして利用できます。 出典 セイフティーネットプロジェクト横浜(社会福祉法人横浜市社会福祉協議会障害者支援センター) 【12頁目 発達障害】 脳機能の発達に偏りがあり、過ごしている環境や周囲の人との関わりの中で、生きづらさや困難が生じる障害です。通常は低年齢で発現し、大きく次の 3 つのタイプ①広汎性発達障害(自閉症・アスペルガー症候群等)、②学習障害(LD)、③注意欠陥・多動性障害(AD /HD)等に分けられますが、発達障害の特性は人によって様々で個人差の大きいことを理解することが大切です。 SOSこんなことに困っています ・こだわりが強く、急な予定の変更が苦手です。 ・じっとしていられずに、勝手に動き回ったりします。 ・相手の気持ちや、周囲の状況を考えてから行動することが苦手です。 ・気が散りやすく集中できないため、うっかりミス等が多くなります。 ・「読む」「書く」「計算する」といったことの中で、とても苦手なものがあったりする場合があります。 ・感覚が敏感で、大きな声に不安を感じたり、マスクをつけることが苦手な人もいます。 ・複数の指示が重なると混乱してしまいます。 対応のポイント ・ゆっくりと、具体的に話しかけてください。 ・安心できる落ち着いた静かな環境を整えてください。 ・「早く」「まだ?」などと急かさず、じっくりと対応しましょう。 ・相手に内容が伝わったか確認してみましょう。 ・予定の変更がある場合には、前もって説明をしましょう。 ・紙などに伝えたい内容、やってほしいことを箇条書きにして伝えてみましょう。 【13頁目 精神障害】 ストレスや統合失調症・双極性障害等の精神疾患により、精神の働きに障害が生じ、様々な生活のしづらさを抱えています。適切な治療・服薬と周囲の配慮があれば、症状をコントロールできることも多く、大半の人は地域で安定した生活を送っています。 SOSこんなことに困っています ・ストレスに弱く、心が疲れやすい面があります。 ・幻聴や妄想が現われることがあります。 ・周りから障害を理解されず、一人で悩んでしまうこともあります。 ・また、病気のことを他人に知られたくないと思っている人もいます。 ・精神障害に対する社会の無理解から、住まいや仕事がなかなか見つけられないことがあります。 対応のポイント ・困っていることに気がついたら、できるだけ早く声をかけてください。 ・本人の気持ちとペースを大切にしてください。本人のペースに合わせた働きかけが大切です。 ・ゆっくり、丁寧に説明を行い、不安を感じさせないような穏やかな対応をしてください。 ・相談されたときは、自分の意見は控えめにして、なるべく聞くことを心がけてください。 【14頁目 合理的配慮の事例】 事例1 窓口での対応 バイアSOS ・受付窓口がどこにあるのか分かりません。 ・自分が呼ばれても分かりません。 ・字を書くのが大変です。 ・言葉が難しくて説明が良くわかりません。 ・問い合わせ先が電話番号だけでしたが、電話がかけられません。 ここがポイント! 困っている様子を見かけたときは声かけを行い、必要なサポートについてたずねましょう。 「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」 「何かお手伝いできることはございますか?」 ●受付番号のコールだけでは自分の順番を確認できない人もいます。係員が順番を伝えたり窓口まで誘導することが必要な場合もあります。 ●並んで順番を待つことが苦手な人もいます。周囲の人の理解を得たうえで、順番の入れ替えや別室に案内するなど、ルールや慣行を柔軟に変更することも考えましょう。 ●自筆が困難な人への対応方法をあらかじめ決めておきましょう。 ●電話でのやりとりが難しい人には、ファックスや電子メールでの連絡ができるようファックス番号やメールアドレスを記載するなどの配慮をしましょう。 【15頁目 14頁続き】 助かります 窓口等での合理的配慮の例 ●窓口での配慮 ・職員から声をかけてくれました。 ・筆談対応の表示がありました。 ・順番が来たら知らせに来てくれました。 ・わかりやすい言葉でゆっくり話してくれました。 ・文書を読み上げて説明してくれました。 ・イラストや図を描いてくれたのでわかりやすかったです。 ・コミュニケーションボードが用意されていました。 ・一つずつ確認しながら説明をしてくれました。 ・低いカウンターがあり車椅子のままで記入できました。 ・事情を話したところ順番を入れ替えてくれました。 ・耳マークのプレートがあり、聴覚に障害のあることを伝えやすかったです。 ●書類等の配慮 ・書類にルビがふってあったので読むことができました。 ・代筆をお願いしたら対応してくれました。 ・ホームページに、テキストデータ※もあわせて掲載してあったので、詳しい内容が分かりました。 ※テキストデータとは、画像などを含まない文字だけの情報で、音声変換ソフトを用いることで文字情報を読み上げることができます。 【16頁目 15頁続き】 事例2 商店での対応 バリアSOS 商品の場所が分かりません。 ・高い場所の商品を手に取ることができません。 ・商品の説明を聞きたいです。 ・混雑する時間帯は避けたいです。 ・セルフレジの操作が難しいです。 ここがポイント 障害のある人の来店を想定して、必要な配慮の方法などをスタッフ間で共有しておきましょう。 ●障害のある人からの意思の表明は、言葉以外にも筆談や身振りなど、様々な伝達手段があります。意思の表明がない場合でも、手助けを必要としていることが明らかな場合には、積極的にサポートしましょう。 ●ホームページなどで混雑する時間帯や提供できるサポート等の情報を発信しましょう。 ●身体障害者補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬)は、障害者をサポートする大切なパートナーです。必要な訓練を受けて認定された犬で、盲導犬・介助犬・聴導犬の 3 種類があります。デパートや飲食店など不特定多数の人が利用する施設では、障害のある人が補助犬を同伴することを受け入れる義務があります。(身体障害者補助犬法第 9 条) ※補助犬マークの掲載 身体障害者補助犬法の啓発のためのマークです。不特定多数の人が利用する施設では、補助犬の受入れが義務付けられています。 【17頁目 16頁続き】 助かります 商店等での合理的配慮の例 ●店内でのサポート ・商品の置いてある場所へ案内してくれました。 ・車椅子の高さに合わせて会話をしてくれました。 ・高い所におかれた商品やパンフレット等を取ってもらいました。 ・商品の形や中身等について丁寧に説明してくれました。 ・チラシを使って説明してくれたのでわかりやすかったです。 ・お釣りを紙幣と貨幣に分けて種類ごとに手渡ししてくれました。 ・レジの操作を手伝ってくれました。 ・段差のある場所で車椅子の補助をしてくれました。 補助犬は生鮮食料品売り場にも同伴できます。(調理場、保管場所等を除く。)介助犬による買い物介助(商品を咥えるなど)を断るときは、介助犬の使用者に丁寧に説明し、代わりのスタッフ が手伝いましょう。 【18頁目 事例集続き】 事例3 飲食店での対応 バリアSOS ・段差があってお店に入れません。 ・メニューが読めません。 ・盲導犬を同伴しているので入店を断わられました。 ・どこに何の料理があるか分かりません。 ・注文の仕方が分かりません。(QR コード等) ・タッチパネルの操作ができません。 ここがポイント! 笑顔と元気なあいさつがウエルカムの第一歩。障害のある人の思いに寄り添った接客は、相手にきっと伝わるはずです。 ●障害のある人が必要とするサポートは人によって様々です。どうすれば障害のある人を受け入れられるか、前向きに解決策を見出していきましょう。 ●障害のある人に対して、サービスの利用を制限する次のような行為は、不当な差別的取扱いにあたるおそれがあります。 ①対応を後回しにすること。 ②サービスの提供時間や提供場所を限定すること。 ③必要な情報提供を行なわないこと。等 ●すぐに対応できない場合でも、待ち時間や待ち人数を伝え、受入れの準備があることを伝えましょう。 ●店内での移動がしやすい動線を確保し、植木や傘立てなどは移動の妨げにならないよう配慮しましょう。 【19頁目 18頁続き】 助かります 飲食店での合理的配慮の例 ●店内でのサポート ・入店時にスロープの用意をしてくれました。 ・入口のドアの開閉を手伝ってくれました。 ・座席まで誘導してくれました。 ・入口に近い席を確保してくれました。 ・メニューを読み上げて説明してくれました。 ・点字のメニューが用意されていました。 ・食べやすい食事を工夫してくれました。 ・写真付きのメニューでイメージできました。 ・お皿の配置をクロックポジション※等で分かりやすく伝えてもらえました。 ※クロックポジションとは、障害のある人から見た方向で、時計の針の位置で場所を伝えます。「3 時の方向にスープがあります」等 ・会計時に、紙幣や貨幣を読み上げ一つずつ渡してくれました。 ・トイレに行きやすい席を用意してくれました。 ・トイレに杖を立てかける器具が設置されていました。 補助犬の同伴に対して、周囲の人からの苦情がある場合は、法律で受入れの義務があること、社会のマナーを守るよう訓練され、衛生面でもきちんと管理されていることを説明し、理解を求めて ください。 犬アレルギーや犬が苦手な客がいる場合は、双方が了解したうえで離れた席になるように配慮をお願いします。 【20頁目 事例集続き】 事例4 公共交通機関での対応 バリアSOS 駅構内の移動が大変です。 ・トイレの場所が分かりません。 ・車内の案内放送が聞こえません。 ・券売機の使い方が分かりません ・乗車を断られたり、イヤな顔をされることがあります。 ここがポイント! 車椅子の使用者に限らず、障害のある人の外出には、様々な困難が伴うことを理解しましょう。 ●公共交通機関(電車・バス・タクシー・客船・航空機等)の事業者に対する国土交通省のガイドライン(対応指針)では、公共交通機関の利用に際して、正当な理由がなく、障害がある人の乗車を拒否することや、盲導犬、聴導犬、介助犬を連れていることを理由に乗車を拒否することは不当な差別的取扱いにあたるとしています。 ●利用者の安全確保の必要性や構造上の問題から、やむを得ず利用を制限する場合には、利用者に丁寧に事情を説明することが求められます。 ●車内表示装置など、視覚情報でも伝わるように工夫しましょう。 【21頁目 20頁続き】 助かります 公共機関での合理的配慮 ●鉄道 ・券売機の操作を手伝ってもらいました。 ・乗降時や移動時に駅員の手助けがありました。 ●バス ・バスに乗車する際、車椅子のスペースを空けてもらうよう車内案内で乗客に協力をお願いしてくれました。 ・バスと歩道の隙間が広くあかないように停車してくれました。 ・バス停留所で、行き先や経路を伝えてくれました。 ・低床式バスが増えてきて助かっています。 ・運賃の支払時にサポートしてくれました。 ●タクシー ・大きな荷物のトランクへの収納を手伝ってくれました。 ・シ-トベルトの装着と装着確認をタクシー乗務員がしてくれました。 ・タクシー業界では高齢者や障害者の特性などを学び、適切に対応できるようタクシー乗務員の接遇改善を目指して、「ユニバーサルドライバー研修」を実施しています。 ●航空機・客船 ・車椅子の貸し出しをしてくれました。 ・搭乗開始を先にしてくれました。 【22頁目 事例集続き】 事例5 医療機関での対応 バリアSOS ・手話通訳の同席が認められませんでした。 ・呼び出しの声が聞こえません。 ・専門用語が良く分かりません。 ・個室での対応が必要と言われました。 ・緊張してしまい症状をうまく伝えることができません。 ここがポイント! 障害のある人の困りごとやニーズを受け止め、安心して医療を受けられる環境を整えましょう。 ●医療的な判断から条件を付ける場合には、本人や家族が納得いくよう丁寧に理由を説明しましょう。厚生労働省が策定した医療機関事業者向けのガイドラインでは、次のような行為は、不当な差別的対応となるおそれがあります。 ・人的・設備的体制が整っており対応が可能であるにもかかわらず、障害があることを理由として診療や入院を拒否すること。 ・正当な理由なく診察室や病室の制限を行うこと。 ・医療の提供に際して必要な情報提供を行わないこと。 ・正当な理由なく、保護者や介助者の同伴を条件とすること。 ●本人から申出のあった配慮事項については、スタッフ間で共有し事前に必要な準備を行っておきましょう。 ●電子メール、ホームページ、ファックス等、多様な媒体で情報提供、予約受付、案内等を行いましょう。 【23頁目 22頁続き】 助かります 医療機関での合理的配慮の例 ●窓口等での配慮 ・受付の係員が、カウンターの外に出てきて対応してくれました。 ・患者さんが少ない時間帯で予約を取ってくれました。 ・順番が来たら知らせてくれました。 ・ホームページから問合せや予約ができました。 ・受付や会計用の機器の操作を手伝ってくれました。 ・診察室まで案内をしてくれました。 ・空スペースを確保してくれたので落ち着いて待つことができました。 ●診察等にあたっての配慮 ・時間をかけてしっかり話を聞いてくれました。 ・質問にも丁寧に対応してくれました。 ・問診票の記入を代筆してもらいました。 ・付き添いの人ではなく、本人に説明をしてくれました。 ・口の動きが読みとれるよう、マスクを外して話をしてくれました。 ・体温調整が難しいので、部屋の温度を調節してもらいました。 ・専門用語を分かりやすい言葉で説明してくれました。 ・写真やイラストを使って説明してくれました。 ・事前に検査の内容を丁寧に説明してくれたので安心できました。 【24頁目 事例集続き】 事例6 施設の利用 バリアSOS ・スポーツクラブの入会を断られました。 ・補助犬を同伴しての入場はできないといわれました。 ・介助者が必要と言われました。 ・大浴場での入浴を断られました。(オストメイト) ・音声ガイドが利用できません。 ここがポイント! 障害のない人と異なる対応をする場合には、障害のある人が不利益にならないように配慮しましょう。 スポーツ・文化活動や余暇活動に関する不当な差別的取扱いの例 ・車椅子使用者が、施設上の問題がないのに入場を断られること。 ・聴覚障害者に聞こえる人の同伴を求めること。 ・遊園地などで、聞こえないことを理由にアトラクション等への乗車を断ること。 ・視覚障害者に対して、危険性があることを理由に観光船の乗船を断ること。等 ●イベント等の主催者は、障害者の参加を前提として実施方法等を検討し、必要な合理的配慮を行うことが求められます。 ●厚生労働省の指針では、「オストメイト及び入浴着を着用した乳がん患者等についても、衛生上問題ない形で入浴サービスを楽しんでいただくことは可能であり、その点を正しく認識し、適切に対処することが必要である。」としています。 【25頁目 24頁続き】 助かります 施設での合理的配慮の例 ●施設利用 ・ホームページでバリアフリー関連の情報が確認でき、安心できました。 ・予約席まで誘導してくれました。 ・展示物を触って鑑賞できるコーナーがありました。 ・スクリーンに要約筆記での表示があり助かりました。 ・手話通訳者の近くに席を確保してくれました。※客席から見えやすい立ち位置の確保・スポットライト等 ・車椅子用のスペースを確保してくれました。 ・施設の案内表示が分かりやすかったです。※色や大きさ、分かりやすい表現、絵表示、点字等 ・スロープや段差の部分が色分けされていました。 ・会議室に磁気誘導ループ※が設置されていて、補聴器利用者でも良く聞き取ることができました。※磁気誘導ループ(ヒアリングループ)は、補聴器や人工内耳の方に、必要な音をクリアに伝えることができます。 ・入浴用の車椅子が用意されていました。 【26頁 事例集続き】 事例6 障害者の就労 バリアSOS ・人工透析になって会社にいづらくなりました。 ・休憩が取りづらいです。 ・疲れやすく仕事に集中することができません。 ・定期的な通院が必要です。 ・仕事のミスを繰り返してしまいます。 ・約束を忘れたり、忘れものをすることがあります。 ここがポイント! 障害のある人も一緒に働く人も、いきいきと活躍できる職場の環境づくりに向けて、みんなの知恵を出し合いましょう。 ●事業者は、障害者であることを理由とする、募集・採用、賃金、配置等での差別が禁止されるとともに、過重な負担にならない範囲で、障害のある人が働くうえでの支障を改善するための措置(合理的配慮)を行うことが義務づけられています。 ●事業主は、本人との話合いの場を設け、障害の特性や本人の希望を踏まえて、適切な配慮を行うことが求められます。プライバシーに配慮したうえで、同僚職員に説明をするなど、周囲の環境づくりも必要です。 ●知的障害のある人に対しては、次のような配慮も大切です。 ・習熟度に応じた業務を割り当てること。 ・工程の単純化等、職務内容を工夫すること。 ・作業手順を分かりやすく伝えること。 ・指示した内容を確認すること。 【27頁目 26頁続き】 助かります 職場での合理的配慮の例 ●障害特性の理解と配慮 ・担当者を決めてくれたので相談がしやすいです。 ・通院に配慮してくれます。 ・休暇が取りやすい職場です。 ・職場の仲間とは、障害の内容や配慮事項に関する情報共有ができています。 ・仲間がよく声掛けをしてくれます。 ・体調が悪い時は、業務量を調整してもらえます。 ・休職後の職場復帰にあたり、段階的に業務を調整してくれました。 ・上司との相談を定期的に行えています。 ・時差出勤を認めてくれます。 ・車椅子が入る机を用意してもらいました。 ・作業の予定をメモしてくれました。 【28頁 取り組みを進めるために】 ●社内の体制づくりをしましょう 担当者や役割分担を決め、計画的に取組みましょう。また、相談対応の窓口を設けるなど、組織的な対応ができるようにしましょう。 ●障害や合理的配慮について学ぶ機会を設けましょう 社内研修の機会を設け、主な障害特性や障害者差別解消法の内容などについての基本事項を理解し、「心のバリアフリー」を進めましょう。 ※サービス介助士(ケアフィッター)  障害のある人や高齢の人を手伝うときの「おもてなしの心」と「介助技術」を学ぶ民間の資格講座もあります。 ●点検をしましょう 障害のある人にとってのバリアとなる施設・設備や社内のマニュアルなどがないか確認し、必要な見直しを行いましょう。 ●できるところから始めましょう 小さなことでも実際の取組みにつなげることが大切です。取り組んだ内容については、ホームページなどで周知しましょう。 ●スタッフ間で話し合いの場を持ちましょう 障害のある人からの相談などを共有し、協力して課題解決に取り組みましょう。障害のある人からのご意見は、貴重な情報源です。こうした声をいかして、利便性の向上や事業の効率化につなげていきましょう。 【29頁目 最終頁】 改正障害者差別解消法が施行され令和6年4月1日から、合理的配慮の提供が義務化されました。  参考 1:障害者差別解消法(事業者における障害を理由とする差別の禁止) 第 8 条事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。 2事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状況に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。 参考 2:対応指針 民間事業者に対しては、事業分野ごとに国(各省庁)が「対応指針」を策定し、事業者の方が障害のある人に適切な対応を行うための合理的配慮の具体例などを示したガイドラインを定 めています。企業や店舗では、このガイドラインを参考にして自主的な取組みが期待されています。 参考 3:合理的配慮事例 内閣府のホームページでは、合理的配慮の具体例等が掲載されています。 合理的配慮の事例 合理的配慮サーチ(内閣府)を検索